著作権とは・著作権の概要
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AIイラストに関連する著作権についての連載コラム3記事目です。
コラムを書いてくださるのは、著作権と契約に関する法務サービスを提供する「メル行政書士事務所」代表の佐藤洸一さんです。
第1回:【コラム】機械学習と原作者の著作権について
第2回:【コラム】著作隣接権とは
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本稿では、著作権制度の全体像・概要について解説しています。著作隣接権等については別記事で解説しておりますので、ご参照ください。
著作物とは
「著作物」とは、著作権法の定義によると「思想又は感情」を「創作的」に表現したものであり、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。典型的には、小説、脚本、舞踊、絵画、版画、彫刻、音楽のような「純粋美術」とされるようなものが著作物となります。他にも、「地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物(著作権法10条1項6号)」のように、設計図や地図のように学術的な創作行為が必要となる表現物や、コードに創意工夫があるときはプログラムも著作物となる場合があります(著作権法10条1項9号)。
著作権とキャッチフレーズ
ただし「思想又は感情」の表現であることから、その主体は少なくとも人間である必要があり、「創作的」である必要があることから、新聞記事の見出しや、常套句のような「陳腐性」のある表現は著作物とはされません(知財高裁平成17年10月6日判決)。同じような理由により、キャッチフレーズや標語のように、ごく短い文章の場合、表現形式が限定されることから、著作物性が否定される場合があります。
著作権と工業デザイン・応用美術
また「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされていることから、著作物は「実用目的を達成するために必要な機能」と分離して「美的鑑賞の対象となり得る(知財高裁令和3年12月8日判決)」ものである必要があり、機能上の観点から形状や構造が限定される工業デザインに属するものは、美術工芸品を除き(著作権法2条2項)、いわゆる「応用美術」としてその著作物性が否定される場合があります。このような応用美術の意匠については、意匠法による保護の対象となります。
著作権(支分権)の種類
「著作権」はこのような「著作物」について生じる「著作者」の権利ですが、著作権という名称はあくまで総称であり、具体的には下記のような権利(支分権といいます)によって構成されています。これらの権利は、いずれも著作者が「専有する」とされていることから、権利者である著作者のみが行使することができ、著作者や著作者から権利の譲渡や許諾を受けていない者がこれらの権利を行使することは、著作権の侵害となります。
著作物の利用に関する権利(複製権・譲渡権・貸与権・公衆送信権)
- 複製権(著作権法21条) 著作物を複製する権利(“copyright”の語源)
- 譲渡権(著作権法26条の2) 著作物を他人に譲渡する権利
- 貸与権(著作権法26条の3) 著作物を他人に貸与する権利
- 公衆送信権(著作権法23条) 著作物をインターネット等で送信する権利
- 頒布権(著作権法26条) 映画の著作物を頒布する権利
著作物の伝達に関する権利(上演権・上映権・口述権・展示権)
- 上演権・実演権(著作権法22条) 著作物を公衆に上演し、または実演する権利
- 上映権(著作権法22条の2) 著作物を公に上映する権利
- 口述権(著作権法24条) 言語の著作物を公に口述する権利
- 展示権(著作権法25条) 美術の著作物を公に展示する権利
著作物の改変に関する権利(翻案権・翻訳権・二次的著作物利用権)
- 翻案権・翻訳権(著作権法27条) 著作物を改変し、または翻訳する権利
- 二次的著作物利用権 原著作物を改変した二次的著作物を行使する権利
著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)
上記の著作権の支分権を著作権の財産的な側面に関する財産権であるとすると、著作権の人格的な側面に関する人格権として、さらに著作者人格権が定められています。
著作者人格権は、支分権とは異なり、著作者がこれを他人に譲渡したり許諾したりすることはできません。著作者人格権には、著作物を公表する権利(公表権:著作権法18条)、著作物に氏名を表示する権利(氏名表示権:著作権法19条)および著作物の同一性を保つ権利(同一性保持権:著作権法20条)があります。未公表の著作物を著作権者の同意を得ずに公表したり、クレジット表記を付さずに公表したり、著作物を改変したりした場合、著作者人格権の侵害となります。
著作物の私的利用
著作権法30条に定める「私的利用(個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること)」に該当する場合は、著作物の複製が可能です。なお伝達(直接見せ、または聞かせること)に関する権利における「公衆」や「公」とは、不特定多数の者にその著作物が伝達されることを意味しており、「特定少数」にのみ伝達され、さらに「不特定」の者または「多数」の者に伝達されるおそれがないときは、これらの権利の行使とはなりません。
その他の著作権制限事由(検討・引用・情報解析等)
著作物の利用に関する検討の過程で著作物を利用する場合、その検討のため必要な範囲内での利用が認められます(著作権法30条の3)。また著作物の情報解析や情報処理のため必要な場合も同様です(著作権法30条の4)。公正な慣行の範囲内において、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」で公表された著作物を引用することもこうした著作権制限事由に該当します。
他に、教科用図書としての利用や試験問題としての利用、図書館における複製、聴覚障害者・視覚障害者等のための複製、非営利の上演等が、一定の条件の下に著作権制限事由とされています。ただし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、こうした利用が制限されることがあります。
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